斜陽

斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)

はてな年間100冊読書クラブ (11冊/100冊)  
読むのは3回目くらいです。ですけれども、感じ方がまったく違いました。
登場人物たちのセリフが非常に印象に残りました。いくつか抜粋します。

僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。僕がなまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。僕が小説を書けない振りをしたら、人々は僕を、書けないのだと噂した。僕が嘘つきの振りをしたら、人々は僕を、嘘つきだと噂した。僕が金持ちの振りをしたら、人々は僕を、金持ちだと噂した。僕が冷淡を装って見せたら、人々は僕を、冷淡なやつだと噂した。けれども、僕が本当に苦しくて、思わず呻(うめ)いた時、人々は僕を、苦しい振りを装っていると噂した。

〜直治「夕顔日誌」より〜

この部分非常に好きです。他人が感じているのは、そんなもんなんですよね。現実社会においても、真面目に仕事をやっている振りをしようが、「本当に」真面目に仕事をやっていようが、「おっ、こいつは真面目にやってるな。偉いな。」みたいな風に周りからは見られるでしょう。優しい振りをすれば優しいやつだと思われる。誰も心の中を覗こうとはしないんです。というよりも、心の中なんて覗けないのです。もし、他人の一瞬の変化を見逃さない事ができたとしても、それは表現された事であって、心の中での変化は気付く事は自分さえもできないと思うのです。


人間は、みな、同じものだ

〜直治の遺書より〜

直治自身はこの言葉に反発しているけれども、私は真実な気がします。人間はみんな同じ。けれども、違う事はわかっています。体つきや顔、考え方、昔で言えば身分などなど違っています。けれども、人間自身は結局のところ人間であるしかない。死んでしまうし、違う動物にもなれない、自分と全く同じ「他人」を見つける事はできない・・・それは、みなが人間だからである。

全体的に読んでいて楽しかった。
そして、ニュースで見たがえびちゃんが太宰の「斜陽」のゆかりの地を旅するDVD発売するそうです。う〜ん、なんだかなぁ。斜陽を読んでいる時にこのニュース見たんで何か変に感じました。巻末の解説にもあったけど、太宰が好きな読者というのは、自分が太宰をよく知っているんだ、みたいな感じで思う傾向が強いかもしれません。
だからどうしたって感じですけども、あんまり関心しないな。僕のただの偏見ですけれども。